WEB版あいちゃん便り
今年は寅年・・・トラとヒトの眼の違い(3)
前回、「トラやネコのようなタペタムを持つ動物は網膜色素上皮細胞にメラニン色素がなく、光を通過させるような構造になっています。」と、記しました。
光が通過してしまったら、眼の中で光が乱反射するため、見にくいのではないかと思い、調べてみました。
【視力】
同じネコ目のイヌやネコなどの視力は、0.1〜0.3と言われています。対象物がぼんやりと見える程度ではっきりとは見えていません。
その理由は、4つ。
- 中心窩が無い
網膜の中心部は黄斑部とよばれ、特別な構造になっており、網膜の中では一番大切な場所です。中心窩とは、黄斑部の更に中心の部分で、微細なものを識別したり、色を見分けたりする働きをもっています。
トラはヒトと同じ位置に同じ形の黄斑部(動物の場合は中心野と呼ばれるそうです)がありますが、中心窩がありません。
ヒトの眼の構造は、こんな感じ。
ヒトが、色や細かいものを識別できるのは中心窩があるためです。その中心窩を持たないトラの目に映るモノは解像度が悪いため、はっきりとは見えないのです。
2.輝板(タペタム)がある
輝板(タペタム)を持つ動物は網膜色素上皮細胞にメラニン色素がなく、網膜を光が通過する構造になっています。輝板(タペタム)で光を反射させ増幅することで、わずかな光でもモノを見ることができる反面、光が眼の中で乱反射してしまうので、結果的に像がぼやけてしまいます。
3.杆状体が多い
ヒトは、網膜の中心部は黄斑部の視細胞の中に、「杆体細胞」「錐体細胞」を持っています。「杆体細胞」は、明暗を感知する細胞で、「錐体細胞」は色や形を認識する細胞です。
ネコ科の動物は、夜行性なので、光を感じる「杆体細胞」と同じ役割を担う「杆状体」(かんじょうたい)が発達しています。逆に、色や形の認識をするための錐体細胞(錐状体)が少ないため、画像の細部がぼやけてしまうのです。
4.水晶体が分厚い
イヌやネコは、レンズの役割を持つ「水晶体」がヒトよりも分厚いようです。暗い場所でも少しの光を目に取り込み、見えやすくするためだろうと言われています。その分厚い水晶体を支える毛様体の働きもヒトよりも劣っているため、自力で水晶体を変形させて、しっかりとピント合わせをすることが難しいようです。
一方で、動体視力はヒトよりもずっと発達していて、動いている対象物に速やかにピントを合わせる能力は優れています。野生で生き抜くために本来備わっている能力とも言えるでしょう。
次回は、トラなどのネコ科動物の色覚について