シリーズで「紫外線が原因のひとつ」と言われている目の病気を取り上げてきましたが、今回でラストです。眼の奥の方、カメラでいうフィルムに相当する部分である「網膜」の病変である「黄斑変性症」についてお話しします。
【網膜病変】 黄斑変性(おうはんへんせいしょう)
※網膜とは・・・
網膜はカメラでいうフィルムに相当する部分で、脳に情報を伝えるために眼の中に入ってきた光を電気信号に変換している器官です。黄斑部は網膜の中心部分ごく狭い領域ですが、細かいものを見分けたり、色を識別したりする機能が黄斑部だけに存在しているとても重要な部位です。黄斑部が障害されると視力がほとんど出ません。
「加齢黄斑変性」という名前を新聞やニュースで見て知っているという方も多いかもしれません。京都大学の山中伸弥教授らによって作製されたiPS細胞はすでに様々な病気の治療に応用されていますが、眼科の分野で最も有名なのが、理化学研究所で進められている、加齢黄斑変性症に対する臨床研究です。
黄斑変性症は加齢によるものだけではありませんが、黄斑変性症の中で「加齢性」のものが多くの割合を占めていると言われています。
≪病態≫
黄斑変性症は、視力や見え方に最も影響する「黄斑部」に障害が生じる病気です。
年齢による変化や光障害で起こるのが「加齢黄斑変性症」です。喫煙や食事、遺伝的素因も発症の原因となります。日本では、50歳以上の人口の約1.3%が加齢性黄斑変性を罹っていると言われています。アメリカで失明率No.1の目の病気で、日本においても高齢化や生活環境や食生活の欧米化などから近年急速に患者数が増えています。
黄斑変性には前駆病変、萎縮型、滲出型があります。
前駆病変では、
網膜に軽い異常(ドルーゼン)を認め、ゆがみを自覚することがあります。萎縮型ではゆっくりと網膜が障害されていきます。
滲出型は、脈絡膜新生血管という異常血管を生じる状態で、ここから血液成分が漏れ出して網膜がむくみ、ゆがみなどの症状が出ます。活動性が高くなると出血がおこり、中心が暗く見えにくくなり、視力が低下します。
加齢黄斑変性症は、 網膜の中心部で最も視力が鋭敏な「黄斑部」に障害が生じる眼病です。
見たいところが「ゆがんで見える」「暗く見える」黄斑変性症はアメリカで失明率No.1の目の病気で、日本においても高齢化や生活環境や食生活の欧米化などから近年急速に患者数が増えています。
網膜の中でもっとも重要な部分で、物を見る中心となる黄斑部の加齢による老化現象が主な原因と考えられています。
また加齢以外にも喫煙や肥満、紫外線なども原因に考えられていて特に青色光線は光刺激(眼の老化を促進する原因)が強いと言われております。
残念ながら、現在、「萎縮型」には効果的な治療はありません。
「滲出型」に対しては、抗VGEF薬という薬を硝子体内に注射して様子を見たり、レーザーを用いて症状が広がらないようにしたりします。
いずれにしても、一時的に効果が得られるだけで、完治するわけではありません。
だから、iPS細胞を用いた再生医療としての研究が進められているのです。
加齢黄斑変性症を予防するために大切なことは?
◆白内障の原因と同様に、体内で酸化ストレスや糖化ストレスが蓄積を防ぐことが大切です。
糖化を促すAGEを多く含む食品(炭酸飲料やスナック類など)は摂取量に注意が必要です。抗酸化効果の高いビタミンを含む果物や野菜を意識的に摂取しましょう。ビタミンCやルテインのサプリメントもおすすめです。
※目の糖化と酸化を予防する眼科専用サプリメントを当院でも取り扱っています。
◆強い紫外線を避けること
近年、オゾン層が破壊され、地球上に降り注ぐ紫外線の量が増えています。特に朝夕の太陽が低い位置にある時間帯は、太陽光線が直接目に入りますので、朝夕のお出かけのときはサングラスが必須です。太陽が高く上ると隙間から入ってくる紫外線もカットするために、麦わら帽子のようにつばの広い帽子や日傘を併用すると効果的です。
どんなサングラスを選べばよいの?
これも白内障と同様です。眼の中に紫外線が入らないようにすることがポイントです。
サングラスは、UVカット加工がされていて、あまり濃くない色のものを選んでください。
濃い色だと、暗さに対応しようと瞳が大きく開いてしまい、逆効果になることもあります。
紫外線は、眼に見えません。
シミやそばかすのように皮膚=目に見える場所にだけ影響を与えるわけではありません。
見ている側の眼の方にも影響が大きいものなのです。
気づかぬうちに、眼も紫外線の影響を受けています。
肌だけでなく、眼の紫外線予防もエイジングケアとしてとても大切なのです!